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  • 2012.12.19
  • Written by 4tama

私的ベストアルバム2012 (@4tama)

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ことしも私的ベストアルバム20を決めました。
下記「Read More」以降に選んだ理由などを長々と書きましたので、そちらも併せて読んでほしいです。
※リンクは基本的にアーティストオフィシャルに飛ぶようになってます。

1: Dirty Projectors – Swing Lo Magellan
2: Fiona Apple – The Idler Wheel…
3: Grimes – Visions
4: うつくしきひかりTNB片想い
5: Of Monsters and Men – My Head is an Animal

6: Cat Power – Sun
7: Gary Beck – Bring a Friend
8: Nathan Fake – Steam Days
9: Brian Eno – Lux
10: テニスコーツ – All Aboard!

11: Orbital – Wonky
12: Soundgarden – King Animal
13: Aimee Mann – Charmer
14: Sleigh Bells – Reign of Terror
15: Animal Collective – Centipede Hz

16: Rone – Tohu Bohu
17: Purity Ring – Shrines
18: 石橋英子 – I’m armed
19: Alabama Shakes – Boys & Girls
20: Ben Klock – Fabric 66



まずことしは、期待していたミュージシャンが期待以上の作品を出してきたことが印象的な年でした。特にDirty ProjectorsやFiona Appleは、職人のようにしっかりと音楽に向き合った、そんな痕跡が感じられる充実作を出してきて、大いに勇気づけられました。Animal Collectiveは、その音楽性の過剰さを前作ではなく前々作を拡張するかのようなベクトルに向けたのは興味深かったです。これらミュージシャンのおかげで、音楽を「流す」とは異なる「聴く」という行為の力を改めて胸に刻むことができました。



また、個人的には、とんちれこーど界隈など東京ニューポップシーンの発見が大きな1年でした。片想い、ザ・なつやすみバンド、うつくしきひかり、チェンバーアナホールトリニティ、さらに柴田聡子など、絶妙な客観視に立脚した雰囲気たっぷりの楽曲群には、オーバーなようだけど、ようやく10年代の幕開けを感じたようでした。わずかに諦念感が漂う詞にもそれがにじみ出ていて、内容を咀嚼しながら浸ることができたのはよかったです。これは日本独自のムーブメントだと思います。歴の長いテニスコーツが『All Aboard!』でバンドサウンドに近寄ったけど、こういった転換が他のミュージシャンにも起こることを期待したいです。



新しドコロで言うと、GrimesやPurity Ring、Daughterなど英4ADを中心としたドリームポップ―このジャンル名は嫌いなんだけど―にハマりました。行き場をなくしたテクノポップがアンビエントに接近し、突然変異してしまった音像が面白かったです。特にGrimesはどういう素地があってこういうスタイルに至ったのか分からないようなクセ球感がよく、Purity Ringの1stは上品にフックを効かせた、実に4ADらしい良作でした。この界隈のミュージシャンは雨後の筍のように一気に現れてやや食傷気味なんだけど、少し耳通りが悪いぐらいの仕掛けを自然体で練り込んでくるヤツらに惹かれた気がします。



雨後の筍といえば、これはメインストリーマーに顕著だったような気がするけど、Of Monsters and MenやSharon Van EttenThe LumineersMumford & Sonsなど、ことしはシーンがフォークを本格的に再発見した年のような気がします。特にOf Monsters and Menは1stにして懐の深さも軽薄さも、そして躍動感も静謐さも同居する佳作を出し、末恐ろしさすら感じてます。フォークへの接近は、これまでチルウェイブなどでシーンに下地はあったにしろ、とても多くの佳作が出たような気がしてます。



また、My Bloody Valentineなどリマスターなど焼き直し音源に(良くも悪くも)はまった反面、Soundgarden、Aimee Mann、The Cranberriesなど往年のミュージシャンが元気に新作を出してくれたのが心強かったです。「往年の」というククりにしてしまうのは申し訳ないけど、Brian Enoのアンビエント作『LUX』は、色んな寄り道を経た上での軟着陸という意味では魅力的な作品でした。Aimee Mannは相変わらずの高クオリティなポップネスですばらしかったです。こういった再発や復活作の流れは2013年も続くと思います。



テクノはシーンの浮沈を知らないし、よく分からないです。個人的にはGary BeckやRegis、Surgeonなどハードミニマルと、Nathan FakeやWallsMax Cooperなどミニマルやプログレッシブをよく聴きました。Gary Beckはフィジカルな雰囲気なのに出音にはインテリジェンスもあり、WIRE12でのDJも含めて上位にしました。Nathan Fakeは前2作の延長線上にしっかりと乗った怪作で、Orbitalには聴き込むごとに巧さを知るという、ピュアテクノの真髄を見た気がします。ダブステップやハウス、テックハウスは夏以降、ぜんぜん買いませんでした。エレクトロからも完全に卒業しました。ばいばい。



チャートアクションとしては、Adele系やFrank Ocean系など歌モノ、もしくはR&Bと、EDMとか言われるエレクトロがメインストリームをつくってるとぼくは認識してて、まあ、それらにはリミックスワークも含め何も決定打を感じませんでした。もうそんなもんだろうと思います。
なぜDirty Projectorsを1位にしたかというと、すばらしいアルバムをつくり、さらにフロントマンのDave Longstressが「最近の音楽は香水のように香り、漂うだけ」とインタビューに語っていたのにシビれたからです。Fiona Appleを1位にしようか最後まで悩んだけど、この世相を表した一言も含めてぼくの「2012年の音楽」だったと思います。

※来日公演で『Beautiful Mother』に合わせて手拍子したのは最高の思い出です。本当にすばらしかった。。。


音源そのものを客観的にみると、Fiona Appleは身を切って差し出したかのような、驚愕クオリティのモノを出したと思います。何か恐ろしいものを覗き込むようなこわさがあり、聴く者の姿勢すらも問うような迫真の内容で、何度聴いても畏怖を感じる生々しさがありました。同じく、Cat Powerも集大成的な大作で、包み込まれるような、突き放されるような、すさまじい表現でした。また、石橋英子のピアノソロは上下する音階をなぞると涙腺が緩むようで、よく聴きました。雰囲気は異なるけど、選外にした柴田聡子の10インチについてたおまけCD(猿島ライブ)からもFiona Appleなどと同種の印象を感じたのは面白かったです。ALABAMA SHAKESは見た目も含め「こんなん来たか、オブザイヤー」です。




あとSigur RosWilcoトクマルシューゴ、映画『ドラゴン・タトゥーの女』のサントラは選外にしたけど、よく聴きました。Jack WhiteThe XXはなぜか買いませんでした。何でだろ。

最後に。これはリスナーとしての変化なんだけど、自分が音楽に接する姿勢がシリアスになった1年でした。音源が内包する物語性を、とても重視する聴き方に戻ったと思います。「そのミュージシャンがその音を鳴らす意味、そしてそれを自分が聴く理由」、それをちゃんと説明できるかどうか。そんなことに改めてこだわりました。どの音源も味わって繰り返し繰り返し聴いたという、まるで高校~大学時代に戻ったような濃密な1年で、臆面なく言うと、ますます音楽が好きになりました。来年はもっと新譜量を減らし、「香るもの」と「沁みるもの」の違いを嗅ぎ分けていきたいです。おわり。

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